まだコロナは終息しませんが美術館なら安心かなと思い、アーティゾン美術館で開催中のM式「海の幸」森村泰昌ワタシガタリの神話展に行ってきました。
美術館の所蔵作品である青木繁作品との現代美術家の森村泰昌作品がコラボレーション展示されているとのことで行くしかないですね。青木作品約10点と、森村作品約60点(50点以上がなんと新作!)で構成されれてるとのこと。作品たちがどのように対峙しているのか期待大です。
ちなみに、森村泰昌はゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を制作して以降、ブレずに西洋や日本の絵画映画に登場する人物に変装し、独自の解釈を加えて対峙する作品の中に入り込み新しい作品を見出す現代美術家です。
今回も章ごとにまとめてご紹介したいと思います。
序 章:「私」を見つめる
第1章:「海の幸」鑑賞
第2章:「海の幸」研究
第3章: M式「海の幸」変装曲
第4章: ワタシガタリの神話
序章:情熱の赤い部屋!自画像たちがドヤ顔でお出迎え
最初の展示室の入り口に青木繁のフォトが!と思ったら森村泰昌作品でした。
案内パネルにかかれている白ペンサインがなければ気が付かなかったかも。展示会終了後に処分するなら欲しいパネルだなぁ。
煩悩まみれのまま部屋に一歩入ると、情熱の赤で彩られた壁紙に大きな青木繁と森村泰昌の肖像作品が対峙していてノックアウト。私の邪念は無事に吹き飛びました。
上記会場写真の左、青木が21歳のときに描いた自画像は自信溢れるドヤ顔のような感じで来場者を見下ろしているかのようです。ちょっと暗い感じがの背景の影響か、物思いに耽る雰囲気を醸し出しています。
曖昧な人物の輪郭に蛍光オレンジのような線描が鋭く映えてアクセントになっていて格好いいですね。もやもやっとした背景と対象的に鋭く入るラインは二面性を表しているのでしょうか。
そいえば、展示会のフライヤーも蛍光オレンジがデザインされてた!このラインかもしれません。
この大作の横には小さな写真作品が展示されているので要チェックです。
ポラロイド写真作品はライブ感があっていいですね。特殊メイクから始まり、最終形態までに至る作家の苦悩がわかります。ちゃんと元となる作品と比較するために顔の向きなど調整している一コマもあったり。なんだか覗き見をしているような気がします。
第1章:青木ブルーの部屋!深海の中で作品を鑑賞するかのよう
情熱の赤い部屋の次は穏やかな海の青で彩られている部屋になりました。その理由はすぐわかります。教科書でおなじみの重要文化財の作品である《海の幸》や海や神話に関連する作品が飾ってあるからなんです。
100年以上も前に発表された作品なのに、近くでよってみると今描いたような生き生きとした筆致に驚かされました。この作品も自画像と同じように輪郭はオレンジのラインでササッとした感じです。
注目はオリジナルであろう木製の額にズームイン。
魚の鱗のような模様が作品を取り囲んでいますね。そして四隅には、なんとかわいい魚がデザインされているではないですか!かわゆすですなぁ。
ふと作品から視線を感じたので額から作品の中心に目を戻すと、1人だけ志村けんのバカ殿様みたいな人物がこちらを向いているではないですか。
フェルメール《真珠の耳飾りの少女》のようにコチラを見るんでちょっとドキッとしちゃいました。すべて男性かと思っていたんですが、どうやら、青木繁の奥様である福田たねという説があるみたい。
とすると、作品の中心で白く輝いているもう一人の人物が作家本人となり、夫婦仲良くサメ?を串刺しで運んでいるこ《海の幸》も自画像ということになりのかもしれませんね。
志村けん作品のコラボを探しましたが、壁には青木繁作品しかはありませんでした。あれっ?と思ったんですが、この部屋では絵画作品ではなく、壁に散文詩のような文字が森村作品になっているようです。
「海」「神話」に関する青木作品が森村流による独自のモノガタリを是非会場で御覧ください。
第2章:制作プロセスを垣間見れる貴重な資料に釘付け!
この第二章の部屋は森村ワールド満載でした。《海の幸》をテーマに10点の連作を制作するプロセスを、スケッチや資料、記録映像などを紹介しています。
制作ノートが公開されていましたがアナログでした。セロハンテープでペタペタ、パソコン作業ではないんですね。忠実に作品を真似るのではなく、真似ながら研究して学ぶ=学ぶ作業をずっと継続されている現代美術家なんだと再認識しました。
いつもチームで作品制作をしていたが、コロナの影響により、たった一人で大阪のスタジオでメイクから撮影まで作品制作されたそうです。その経過を垣間見ることができる貴重な映像作品が公開されています。ご自身でメイク、着替え、撮影したり…YouTubeで公開していただけないかなぁ。
映像作品の周りには実際に利用された衣装やグッツもありますので必見です。
なんと別の部屋に作品背景となるジオラマまで展示されているんです。初見では理解できませんでしたが、次も展示スペースにある10連作のもとになる背景作品のようです。
このような思考作業というか、バックステージみたいなものだけを集めた企画展を今後も展開してほしいなぁ。早く作品をみてみたい〜とドキドキしながら、10連作が展示されているスペースに向かいます。
第3章:どこを見ても作品がある!360度が展示スペース
圧巻な楕円の展示スペースです。
世相を反映した絵巻物的な世界を《海の幸》の変装(奏)曲として展示されています。幅約3mのM式「海の幸」10点が円環状に構成される大規模なインスタレーション。
明治・大正・昭和からコロナ禍の現代、そして未来へと続く日本の文化や歴史を舞台に青木の《海の幸》を10点のに展開し、85人もの登場人物がいました。
1サークル状になっているのは意味がありそう。
日本の絵巻物のように右から左へ年代がすすみます。最後、遮光器土偶のような宇宙人の銛が指す場所が最初の作品につながってるかも。輪廻転生というか永遠に物語は続きます。
この作品の幅は3メートル近くもあるので、全体を見渡すために展示スペースのど真ん中に鎮座する椅子に座って眺めるのがベストですよね。
あっ、座る時気をつけてください。ふかふかソファーではなく、ガチガチの椅子です。勢いよくすわったのでお尻が裂けそうになりましたよ。
第4章:寝落ち注意!ミニシアターさながらの椅子にて作品鑑賞
最後の章で青木繁に扮した森村泰昌さんによるワタシガタリの映像作品を鑑賞できます。
役者もできるのかってくらい、写真作品以上になりきってました。どのようにして今回の作品が生まれたのかなんとなく理解できたような気がします。
作品を全部見終わった後に鑑賞、その後もう一回展示ルームを駆け足で見直すと面白いかもしれません。
注意点は、映画館さながらのシアタールームとして椅子が心地よいことです。20分もない上演時間ですが、ちょいウトウトしてしまいそうになりました。いや、一瞬だけど寝落ちしたかもしれない。
意外と美術館って歩きまわるので疲れるんですよ。
森村グッツがリーズナブルで盛りだくさん!
一番リーズナブルに展示会の思い出を持ち帰ることができるのはポストカードではないでしょうか。
アーティゾン美術館の今回のグッツは超おすすめです。印刷も紙質も素晴らしく、お値段なんと110円ですよ!しかも長尺サイズっていうんだから、作品を家に持ち帰るようなもんです。ホント買うしかないです。
図録のツルツルした紙に印刷すると原画との色合いが乖離することが多いんですよね。その分、単品で色補正できるからか、ポストカードは作品に忠実な色合いでいいですね。
ひとつ残念なことは同サイズの青木繁オリジナル作品のポストカードがないことです。通常のハガキサイズはあったのですが、やはり森村作品と同じサイズで販売にして欲しかった。並べて飾りたいじゃないですか。購入したポストカードにいつか森村泰昌さんにお会いしてサインをいただきたい!
めでたく邪念復活です。
展示会情報
お得に入館するために、事前にWEB予約しましょう。入館料が300円も割引されますので、浮いた分はミュージアムショプで販売されているグッツの購入資金になりますよ。
展覧会名:ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌
M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話
会期:2021年10月2日[土] – 2022年1月10日[月]
時間:10:00 〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(1月10日は開館)、12月28日−1月3日
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